故 春名正光先生を偲んで

2022年4月7日

JPC関西顧問 山田 憲嗣
(広島工業大学 教授、大阪大学大学院情報科学研究科 特任教授)

春名正光先生と初めてお目にかかったのは、私が大阪大学臨床医工情報研究教育センター(MEIセンター)に赴任した2008年の春でした。当時、医工連携に関するプロジェクトやセンターの設立への関心が高まっていた時期であり、春名先生は阪大医学系研究科において正に工学特に“光学”の最先端技術を医療機器開発(OCT)に適用されていた第一人者でした。駆け出しであった私には雲の上の存在であり、先生が執筆された論文を読み勉強させていただいていました。そのような折に、春名先生のことをよくご存じでした広島工業大学名誉教授 橋爪信郎先生の御紹介により赴任後すぐに教授室を訪問し、お話を初めてさせていただきました。学会などでお聴きしていた厳しいお顔での鋭いお話とは違い、笑顔でざっくばらんな会話についつい長居をしてしまったのを昨日のように思いだされます。

2年後、阪大発で看護工学を推進するため、先生と同じ医学系研究科保健学専攻に私が異動となった時、なんと定年退官されたばかりの春名先生の隣の部屋をお借りすることになりました。当時の研究室は元々1部屋だったところを薄いパーティションで仕切ったつくりで、廊下からの扉を共有させていただいた作りでした。一部屋に春名名誉教授と私が同居しているようなイメージで、先生の御迷惑にならないように緊張しながらの研究生活がスタートしました。研究には厳しい先生らしく、当時助手されていた近江雅人先生がほぼ毎日先生のところで指導を受けられているのを目の当たりにし、先生の教育、研究への真摯で情熱を感じる姿勢が印象的であり、近江先生や学生さんを羨ましく思いました。

産学連携本部に移られてからは、他大学からの学生をご紹介いただくだけでなく、JSTなどの競争的プロジェクト申請へのご助言をいただくなど、医看工連携に多大なご尽力をいただき看護工学に対する学内外の注目度が上がりました。JPC関西をご紹介いただいたのもこのタイミングでした。2016年の特定テーマとして「介護・看護分野における光技術」を取り上げていただき、“表面増強ラマン分光法による涙液からの薬物濃度推定”や“介護ロボットにおける光技術の応用”など大学・企業の講演など、フォトニクスの医療・看護・介護への展開を拡げることができました。さらには、ロボットフォトニクス産業の創出(経済産業省 平成29・30年度 地域中核企業創出・支援事業)にもお声がけいただき、多くの企業の方々、先生方と親しくなることができ、その後もお付き合いさせていただいております。私にとって、また医看工連携分野とって、大きな大きな財産となっております。

講演会の後の懇親会で、赤ら顔の先生と阪急梅田駅までご一緒させていただいたときの楽しい情景が思い出されます。その後のCOVID-19 などがあり、お会いできずに最後までお目にかかれなかったことが残念でなりませんが、先生が残してくださった大きな遺産を今後世界で花開かせることを誓い、少しでも先生の御意志を引継いで参ります。
先生のご功績に深甚なる敬意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。

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