【開催報告】「光・レーザー関西シンポジウム2025」2025年7月17日開催報告
2025年8月20日
NPO法人日本フォトニクス協議会 JPC関西
「光・レーザー関西2025シンポジウム」開催報告
〜実用化・社会実装が間近の光、レーザー技術〜
2025年7月17日(木)13:30~17:00
マイドームおおさか8階 第3会議室にて
本年度、JPC関西は設立12年目を迎えました。近年の光・レーザー技術の進展は目覚ましく、さまざまな分野での社会実装が進展しています。本シンポジウムでは、特に社会実装が間近に迫っている技術として、GaN VCSELや次世代半導体レーザー、レーザーによる医療応用、大型構造物の表面処理、そして6Gに向けた光無線通信をテーマに取り上げました。
各分野の第一線で活躍する講師の方々による講演を通じて、技術の現状と展望、さらには実用化に向けた課題について幅広く共有する機会となりました。
また、オプトロニクス社がラジオ大阪とともに今年開始した番組「サイラジ!光の未来探検」の放送内容をまとめた書籍『光がわかる読むラジオ』を、参加者の皆様に配布いたしました。
冒頭に主催者を代表してJPC関西支部長より本シンポジウムの趣旨と参加者への御礼が述べられました。
▲主催者挨拶(山本和久 JPC関西支部長)
講演1として濵口達史教授(九州大学 総合理工学研究院)より『GaN VCSELと半導体レーザーの将来』のご講演をいただきました。
まず、VCSELについて、LEDやEEL(端面発光型LD)との発光原理や構造の違い、基板材料、すでに社会実装されている分野について幅広い解説がありました。
続いて、GaN系VCSELの構造や特性向上のための開発ポイント、次世代の開発目標について説明がありました。さらに、ディスプレイ、センシング、通信など、将来有望な応用分野について紹介されました。
専門外の参加者にもわかりやすい講演内容で、GaN系VCSELの特徴や将来性を理解する貴重な機会となりました。
▲濵口達史氏(九州大学 教授)
▲会場の様子
講演2として西村隆宏先生(大阪大学 大学院工学研究科 環境エネルギー工学専攻 量子エネルギー工学講座 助教)より『レーザー・光医療とin silico評価』のご講演をいただきました。
レーザー治療は低侵襲・低コストという利点を持ち、今後は高齢者の治療や未病・フレイルへの応用が期待されていますが、治療効果の実測が難しく、個体差や多数のパラメータの存在が課題となっています。これに対して、in silico(コンピュータシミュレーション)評価の活用が提案され、臨床試験の代替や効率化、倫理的・経済的制約の回避につながることが示されました。光照射プローブの性能比較や臨床における照射光のモニタリングの数値化の可能性も紹介され、会場からは新しい光源の適用可能性について質問が寄せられるなど、関心の高さがうかがえました。
▲西村隆宏氏(大阪大学 助教)
講演3として森口輝実氏(商船三井ドライバルク株式会社 常務執行役員/機関長)および柵山慶太氏(古河電気工業株式会社 営業統括本部 レーザ応用事業部)より『船舶整備に向けたインフラレーザ®︎システム、レーザブラスト技術の開発』のご講演をいただきました。
本技術は、社会インフラの効率的維持管理という社会課題の解決を目指し、塗膜・錆の除去を従来の機械工具・薬品・ブラスト工法に代えて、環境負荷・安全性・作業効率の面で優れるレーザーを活用するものです。独自の光学設計により金属組織へのダメージが少なく、海洋構造物や商船など定期整備が求められる対象への応用性が高いことが紹介されました。
講演では、商船三井ドライバルク社の運航船での実装に向けたプロジェクトの進捗が報告され、会場には業界メディア4社の取材も入り、実用化に向けた期待と関心の高さが示されました。
▲左:森口輝実氏(商船三井ドライバルク(株))右:柵山慶太氏(古河電気工業(株))
講演4として柳本教朝氏(ソフトバンク株式会社 先端技術研究所)より『6G時代における光無線通信とその技術要素』のご講演をいただきました。
現代の通信ネットワークは社会インフラの一部として不可欠な存在となっており、災害時における迅速な通信回復も課題となっています。その解決策として、成層圏のHAPS(高高度プラットフォームステーション)や衛星通信の活用が進められており、中でも光無線通信(FSO)は大容量・耐盗聴・高秘匿性を兼ね備えた次世代技術として注目されています。一方で、光無線通信は「切れる・揺らぐ・外れる」といった課題があることも紹介され、それに対応するため、光学・精密加工・材料・通信・半導体・電機・メカトロニクス・制御といった多様な分野を統合する技術的挑戦が必要であることが強調されました。現在進行中の各種実証試験や将来有望な技術の展望についても紹介され、参加者の関心を集める講演となりました。
▲柳本教朝氏(ソフトバンク株式会社)
シンポジウム終了後、会場近隣のβ本町橋にて情報交換会を実施しました。共催団体理事の加藤氏による乾杯の音頭で始まり、講師や参加者間で活発な意見交換が行われました。
最後は、JPC関西運営委員であり講演者でもある濵口教授のご挨拶で締めくくられました。
▲情報交換会の様子
最後に
今般、講師各位、各位所属の機関や企業、株式会社オプトロニクス社、情報交換会会場 「β本町橋2Fラボ」店の皆様、その他方面の関係者方々のご尽力ご支援により無事開催のご報告ができましたこと、感謝申し上げます。
(ご参考)
第7回 光・レーザー関西 2025
来場者実績
7月16日(水)496名(昨年648名)
7月17日(木)433名(昨年603名)
合計:929名(昨年1,251名)※同一日の再入場はカウントせず
出展実績
64社・団体(昨年62社・団体)
次回開催予定
第8回 光・レーザー関西 2026
会期:2026年7月15日(水)・16日(木)
会場:マイドームおおさか
併催:レーザー技術総合研究所 ILT2026(令和7年度研究成果報告会)
光・レーザー関西シンポジウム2026 ほか
詳細は公式サイトをご覧ください:
https://www.optronics.co.jp/opto-kansai/